ナッツスパータエクストラ

月刊コミックフラッパーで「バッドビート!」連載中、漫画家・矢崎結子と渡辺アビの活動ブログ

縦スクロール漫画の話題に軽く飛び込んでみたよ

ちょっと現実逃避してる無力なワタナベアビです。

現実逃避のさなか続けてこんな記事を読みました。

 

iharadaisuke.hatenablog.com

 

tkw-tk.hatenablog.jp

 

前者は漫画原作者の猪原先生らしく「海外展開も期待できるし縦スク漫画やろうぜ」みたいなまとめの話で、後者は「低年齢にリーチする縦スク漫画状況は60年代に似てるよね」みたいな分析の話でした。

ワタナベアビは描く側なので、実際に描きながら考えたことをちょっと話そうかなと思います。

 

一度戯れにナッツスパータを1コマずつにバラして縦スクロール仕様に並べてみたことがありました。

アクションのある場面は全身やロングで状況見せるカットが想像以上に小さくなって印象が弱まるし、スクロールさせることで相対的にカット位置が変わっていくので「これこのままだとかなり辛いわ」って結局やめちゃったんですけど。

ということは、縦スクロール漫画を作る際には、アクションとか大ゴマをページの要所に置く(複数カットに同一画面内での優先順位を付ける)画面構成みたいな要素よりも会話劇としての練度を上げてく感じのが有効そうに見えます。

だからストーリー4コマみたいな形式はローカライズ(?)が容易そう。

少女漫画文法も案外相性がいいみたいです。

感情の変化を暗示するタメの効果や間ゴマは必ずしも横に広く展開する必要はないし、スクロールさせる距離で間が取れる=読者の動作を伴うので、経過や変化を飲み込んでもらいやすい気がする。

ホラー系はあまり見てないけど相性いいはず。見えないものが見えてビックリという部分は変わらないので。

そんなわけで現時点での結論としては、少年漫画的な迫力押しの表現が弱体化してる感じを除けば、だいたいの事はできそうだということです。

あと小ネタですけど、アクション的なもので「アッパーカットが有効かも」という知見も得られました。視点移動が上から下なので、急に逆の動きが目に入るのが驚きでした。なのできっと切り下ろしみたいな動作も気分がいいだろうなと思います。こういうのは現在の「勢い感出すには右から左に動かす」みたいな定石になっていくんでしょうね。

 

菊池さんがおっしゃってる若い層へのリーチという意味では、アプリで読む縦スクロール漫画は避けて通れないと思います。

ただこの界隈で感じるのは、作品を読んでくれる人の流れがサービスの中で完結してしまっている印象を受けるのが気になるなということです。規約とか読んでも、著者が他の作品などに誘導するのをやんわり拒んでいる感じがあるというか。

他サービスやよその資本によるプロダクトの宣伝活動に利用されないための予防線なんだと思うので難しいところだとは思いますけどね。

 

次に猪原先生の記事にもあった海外展開についてのお話を。

縦スクロール漫画は見開き形式の漫画より海外ローカライズはしやすいように見えます。例えばコマが右左に並ぶケースがほとんどないから。

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たとえばこの場面。

英語化するとこう。

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英語が酷いことは勘弁してください。誰かネイティブチェックしてくれる人いないかしら(チラッ)

閑話休題、テキストを左から右に読むので展開が逆になってしまう問題。これが視界1コマしか入らない縦スクロール漫画にはないからという話ですね。

右左に二つ並んだコマがあったら、横書きテキスト文化圏は左→右って順番で読んでしまうんですけど、それがないから楽だろうと。

でも実際にやってみると、事はそれほど単純じゃなかったです。

はいこちら。

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これがこう。

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語順が逆になる!

こういうのが割と簡単じゃないです。

Kindle出版したいって思った時から、ウチの漫画はフキダシのレイヤー変えて(要はフキダシに隠れる部分まで絵を描いて)対応できるように描いていたんですけど、逆順でサイズの違うフキダシになる事までは想定していないので、右側にある一葉の顔に被ってしまうことになります。あるいはちるとの位置を動かさなければいけない。

んで海外の人に見せたら「絵を反転させればいいじゃない」と軽く言われてしまって凄く困った。

描かれた見え方で可愛くみえるようナチュラルにデフォルメが入ってるため反転させるとデッサンの狂いに見えてしまう問題や、服のあわせ反対になってしまう等の、様々な鏡像問題が発生するんだよって説明するのは至難だし、言い訳しても仕方ないので、最初から文脈の作り方を右左、左右両バージョンで想定しておく必要があるわけです。

 

昔、竹熊健太郎先生が「ネームを横書き化しないと今以上の展開ができないよ」論をツイートしてました。

togetter.com

 

最初にこの辺りの話を読んだ時には「これって最後には国語教育の問題になっちゃうから無理筋な気がするなあ」と思ってたんですけど、今は切実な気分で見返したりしてしまいます。

これもまた、縦書き文化圏で本という媒体に特化して超進化してしまった漫画という表現の、ガラパゴス問題なのだろうなと思いつつも、それでも今後は、何かしら面倒が少なくて効率的でスマートな解決を考えなきゃいけないのだろうなあと、それらしい問題提起めいた言説を弄しつつ本稿を終えようと思います。

 

 

最後に業務連絡です。

最新13話は17ページまで描いたところでとりあえず本家にドロップさせていただきます。

絵は終わったけどネーム入力がまだなので、できれば週内を目標に!